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グリーンガム中毒

グリーンガム中毒

母は、下戸の父に付き合って、飲酒もしないし、タバコも飲まない人だが、グリーンガムを常に口に入れていた。箱ごと大人買いをしたロッテの「グリーンガム」は、母のタンスの中に、いつでも積み重ねられていた。

思春期の頃、そのタンスのグリーンガムを、私は、ちょいちょいくすねていたが、あまりに大量だったので、1枚や2枚無くなったところで、バレることはなかったように思う。

そんな状況が、十年以上続いていたと思うけれど、嫁に出たことで、タンスの中の母の密かな愉しみについて、その後、特に思い出すこともなかった。

だから、いつ、母の中毒が完治したのかは知らない。いつの間にか、ガムを噛む母の姿を見ることはなくなっていた。

何年か前に、突然、このことを思い出したので、七十を超えた母に、かつてのグリーンガムの中毒事情について尋ねると、母の方は、嘘みたいに、けろっと忘れていて、「そのガムは、入れ歯にはひっつかんのかい?」などと私に訊ねてきた。

「そんなん、知らんわ」と、私は笑った。

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